下痢の治療ガイド

-桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)-

桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)の効能

比較的体力がない人で、腹部が膨満していて、便秘気味で腹痛があり、時に下痢といった人に用います。腹には割合に力があり、腹痛は持続的です。

下痢の回数は多いものの、1回の量は少ない、腹痛と渋り腹がある、絶えず便意をもよおして苦しむという場合に用います。腹部が膨満し、腹直筋が緊張することも目安です。


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適応される症状

配合生薬

配合生薬の効能

桂皮(けいひ)

桂皮には、発汗作用 健胃作用 のぼせを治す作用 鎮痛作用 解熱作用があります。漢方では、頭痛、発熱、悪風、体痛、逆上などを目的に使います。

主成分は、カツラアルデヒドを含む精油です。

風邪をひいて胃腸や体が丈夫でない人は葛根湯(かっこんとう)でなく、桂皮を配合した桂枝湯(けいしとう)を服用すると良いでしょう。

民間療法として桂皮は健胃、整腸に用いられ、桂皮を煎じて食前に飲みます。また桂皮の葉を陰干しにし布袋に詰めて風呂に入れると、精油の作用で体をあたためる効果があります。

生姜(しょうきょう)

生姜は優れた殺菌作用と健胃効果、血液循環の改善効果、発汗と解熱効果があります。漢方では芳香性健胃、矯味矯臭、食欲増進剤の他、解熱鎮痛薬、風邪薬、鎮吐薬として利用されています。

辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用、中枢神経系を介する胃運動抑制作用、腸蠕動運動充進作用などが有ります。そう他、炎症や痛みの原因物資プロスタグランジンの生合成阻害作用などが認められています。

大棗(たいそう)

大棗は滋養強壮、健胃消化、鎮痛鎮痙、精神神経用薬として、多くの漢方処方に配合されています。

含有サポニンのジジフスサポニンによる抗ストレス作用があり、アルカロイド成分リシカミンのおよびノルヌシフェリンなどによる睡眠延長作用、多糖体ジジフスアラビナンによる免疫活性などが報告されています。

その他、サイクリックAMP(環状アデノシン一リン酸)があります、サイクリックAMPは脂肪組織を構成する中性脂肪の分解を促します。また、含有成分フルクトピラノサイドには抗アレルギー作用が認められています。

甘草(かんぞう)

甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。

有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。

その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。

有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。

甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。

芍薬(しゃくやく)

芍薬は漢方処方で最もよく配合される生薬の一つで、主として筋肉の硬直、腹痛、腹部膨満感、頭痛、血滞などに広く処方されています。

主成分のモノテルペン配糖体ペオニフロリンには鎮痛、鎮静作用の他、末梢血管拡張、血流増加促進作用、抗アレルギー、ストレス性潰瘍の抑制、記憶学習障害改善、血小板凝集抑制などの作用が有ります。その他、非糖体ペオニフロリゲノンには筋弛緩作用が認められています。

大黄(だいおう)

大黄は瀉下(下剤)、消炎性健胃薬として、常習性便秘症に使用されます。

ジアンスロン成分であるセンノサイドA-Fに瀉下作用が認められます。センノサイドA-Fは腸内細菌によって強い瀉下活性を示すレインアンスロンに変換されるからです。

フェノール配糖体の一種リンドレインには消炎、鎮痛作用が認められています。またタンニン成分に、血中尿素窒素(BUN)低下作用が報告されていることから、腎不全改善効果も期待されます。

漢方では、特に実証の人(体力がある人)の便秘薬として他の生薬と配合して高い効果をあげていますが、大黄には子宮収縮促進作用や骨盤の充血増長作用があるため、産前、産後や月経期間中は使用しない方がいいです。

漢方薬の使用上の注意

漢方薬の副作用


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下痢に処方されるその他の漢方薬

漢方薬は、自分の証に合ったものをお選び下さい。

「証」とは体力、体質、症状などから患者さんの状態を総合的に観察した診断結果のことです。

  • 実証は生理機能が高まった状態を意味して、外見は健康そうに見えます。
  • 虚証は体力がなく、生理機能が衰え、抵抗力も低下した状態を意味します。
  • 中間証は実証または虚証のどちらも偏らず、それぞれの特徴を半分ずつもつ場合を意味します。

「証」の判定は証の自己判定テストご利用ください。

実証

  • 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
    みぞおちがつかえて硬く張り、お腹がゴロゴロして下痢をする吐きけ嘔吐、食欲不振、ゲップなどがある人に有効です。
  • 葛根湯(かっこんとう)
    急性の下痢で、熱と寒気があり、汗がでない人に有効です。
  • 大柴胡湯(だいさいことう)
    急性の下痢に適しています。腹痛と渋り腹があり、ムカつき、嘔吐、口の渇き、食欲不振などを訴えている場合に効果的です。みぞおちが張って抵抗と圧痛があり、舌に黄色っぽい苔があることなども目安です。

中間証

  • 五苓散(ごれいさん)
    水様性の下痢をして、ノドが渇いて水を飲むのに尿の出が少なく、ときに水を飲んでもすぐに吐いてしまう人に合う処方です。小児の下痢にも効果的です。
  • 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
    みぞおちと、左右の肋骨の下あたりが緊張して硬く張り、腹痛、下痢、ムカっき、嘔吐などがあるものに用います。ストレスによる下痢に有効です。

虚証

  • 人参湯(にんじんとう)
    ふだん胃腸の弱い人が、おなかを冷やしたり冷たいものを食べて下痢をしたという場合に効く処方です。脈も腹も軟弱で、口のなかにツバがたまる、胃に水が停滞してピチャピチャと音がするなどの症状が目安です。
  • 真武湯(しんぶとう)
    ふだんから胃腸が弱く、冷え性で疲れやすい、とくに腸の症状が悪く、激しい下痢をした後にぐったりと疲れを感じるという人に向いています。よく人参湯(にんじんとう)と合方して用います。
  • 胃風湯(いふうとう)
    真武湯(しんぶとう)を用いるような虚弱体質の人の下痢で、粘血便の下痢が続いて、渋り腹がある場合に有効です。
  • 大建中湯(だいけんちゅうとう)
    普段から下痢をしやすく、冷房などで冷えると腹痛とともに下痢がひどくなるような人に用います。腹部が全体として軟弱で、腸管の動きを外から見ることができるようなものに適しています。

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