下痢の治療ガイド

-便失禁のバイオフィードバック療法-

便失禁のバイオフィードバック療法

便失禁の原因

便失禁は、肛門を締める括約筋の力が弱まって起こります。

老化などに加え、女性では出産時に括約筋が傷ついて起こる場合もあります。

括約筋の損傷がひどいと、形成手術などが必要ですが、老化が主な原因の場合は、もっと手軽な治療法があります。弱った筋肉を鍛えて、再び強くするバイオフィードバック療法です。

「便失禁は今もタブー視され、患者数すら分かりません。しかし、誰にも相談できずに悩む人は、想像以上に多いのではないのでしょうか」。高野病院会長の高野正博(たかのまさひろ)さんは、そう実感しました。


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バイオフィードバック療法の方法

最近、寝たきり予防などのため、高齢者の足腰を鍛える筋カトレーニングが注目されていますが、肛門の筋肉もあきらめずに訓練すれば強くできる、というわけです。

ただし、高齢者の場合、おなかに力が入ってしまい、目的である括約筋が十分に動かないことが多いいです。そこでまず、肛門に括約筋の動きをとらえる細い管を入れ、筋肉を動かします。筋肉の動きは、パソコン画面に波形で表示され、患者はこれを見ながら、うまく動かせるようになるまで練習します。

代表的な「肛門内圧法」では、肛門に圧力測定用の細い管を入れます。パソコン画面を見ながら、肛門を10秒間ほど締め、次に緩めます。この動作を約15分間繰り返します。

この方法は腹圧でも圧力が上がるため、括約筋の力を正確に測れないことがあります。そこで、最近活用され始めたのが「筋電図法」です。直径5ミリの電極を肛門に入れ、括約筋が動く時に発生する電気を検知します。

これらの治療は、重症の場合、入院して朝昼晩の3回行います。外来では、状態に応じて月に1-4回繰り返し、これを3か月間続けます。コツを習得した後は、自宅で1日3回、各10分間実践することで、持続的な効果が現れるといいます。

医師や検査技師、理学療法士らが協力してこの療法に取り組む同病院では、開始から3か月で7割の患者の失禁が治まるか軽くなりました。高齢者でも「5-6割が改善します」と高野さんは言います。

低周波電気刺激法の併用

治療効果を高めるため、同病院では「低周波電気刺激法」を独自に取り入れています。整形外科などで腰痛などに使う電気治療器をお尻にあて、括約筋につながる神経を電気で刺激して筋力を上げます。バイオフィードバック療法との組み合わせで、8割の患者の症状が改善しました。

ただし、便失禁のバイオフィードバック療法は健康保険が使えません。

日本大腸肛門病学会は1996年から保険適用を求めていますが、いまだに認められず、実施できる医療機関は限られています。

便失禁の患者会

2005年秋に、熊本市で「仙骨神経症候群患者会」が発足しました。便失禁に加え、肛門括約筋につながる神経の障害などから、肛門や骨盤内の痛みなどに悩む患者さんが対象です。年に数回、医師の講演会や患者同士の交流の場を設けています。お問い合わせは高野病院へ。


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関係医療機関

高野病院

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